イギリス靴好きの、かつての最終目標とも言われたチャーチ(Church’s)。
Made in UKにこだわり、約250の手作業を8週間の期間に渡り作り上げる、英国職人の技術が詰まった靴は、伝統を守りつつ、時代を超えた美学と卓越した品質で世界的に高く評価されています。
この記事では、そんなチャーチの革靴の歴史を紹介しながら魅力に迫って行きます。
チャーチ(Church’s)の歴史
今日では正統派の英国靴として、不動の地位を確立したチャーチですが、
上記に至るまでには深みのある歴史が存在していることで知られています。
以下では、年代ごとの代表事例を紹介してゆきます。
1617年〜:原点
現在でもチャーチを中心に、英国既製革靴ブランドの工場が乱立する、イギリスのノーサンプトンにアンソニー・チャーチの工房がありました。
熟練の靴職人の技術を誇りは、やがて世界に名を轟かすこととなります。
1873年〜:チャーチ社(Church’s)の誕生
アンソニーの曾孫のトーマスは妻のエリザと息子のアルフレッド、ウィリアムとともに、
ノーサンプトンのメープルストリート30の小さな工房に正式にチャーチ社を設立。
その後、成長の波に乗り始めたチャーチの工場は1880年に、より広い敷地をもったデュークストリートに移転されることとなります。
この時代は産業革命の影響を受け、工業化が急速に進む中で、チャーチへの注文は、安定して拡大を続けていきます。
1900年〜:成長するブランド価値
この時代は、アメリカやカナダ市場への参入の他、ジョージ王子とメアリー王妃がノーサンプトンに訪れた際には、王女に対して靴を献上する栄誉ある権利を得ました。
さらに1921年には、ロンドン初の路面店を出店。
1929年には、最もアイコニックな存在の1つである「Shanghai」を発表。
海外に在住するイギリス人のためにデザインされた革新的なスタイルであり、
チャーチは男性的なワードローブの優雅さを再定義することとなります。
1940年〜:激動の時代を乗り越えて
第二次世界大戦時は、チャーチは軍用靴の製造に注力。
戦後の1950年台には、複数のシューメーカーや小売店の買収を通じ、
イギリス国内の地盤固めを進めてゆきました。
1957年には、現在の本社が所在するセントジェームズロードに新工場を竣工、
さらに、北米やイタリア、日本、香港といった海外進出を進め、世界的な既製靴ブランドに成長してゆくこととなります。
1990年〜:大手メゾン(PRADA)傘下へ、新しい幕開け
ラグジュアリーブランドのプラダ・グループに買収し、チャーチのグローバル戦略を拡大。
2001年にはミラノとパリ、2002年はローマ・サンモリッツ、
2003年にはニューヨークなど、世界的な大都市を中心に旗艦店を出店。
1617年から続く、靴職人の伝統と技術・誇りはそのままに、より現代的なスタイルも取り入れてゆくこととなります。
チャーチ(Church’s)の靴作りの特徴とは
ここからは、1617年から現在に至るまでで培われた伝統的な靴造りをモットーとするチャーチの特徴・魅力に迫ってゆきます。
伝統的な英国のクラフトマンシップの追求
冒頭でも紹介した通り、チャーチの1足あたりの製作工程は、250以上の製作工程を約8週間かけてハンドメイドで行われます。
さらに英国靴のお家芸とも言える、グッドイヤーウェルテッド製法で耐久性を高めます。
上記イメージにある通り、ウェルトと呼ばれる革とアッパーとインソールを
機械で縫い合わせ製法で、堅牢性を高めつつ、持ち足の足型にじっくり馴染んでいくのが特徴です。
- 長く履ける(アッパーとアウトソールが直接縫合されていないため、ソールの交換が可能)
- クッション性が高い(インソールとアウトソールの間にクッション材のコルクが入っている)
- 使い込むほど足に馴染んでくる(コルクが自分の足に合わせて沈み込み、フィット)
独自性のある素材「ポリッシュドバインダーカーフ」
ポリッシュドバインダーカーフ(Polished Binder Calf)は、チャーチが独自開発にした、
カーフの表面に樹脂加工をしたアッパー素材です。
革の表面に樹脂加工を施す革をガラスレザーと比較して、薄く樹脂をのせることで、カーフの上品さを生かしながら上品な光沢と耐久性をそなえており、クオリティに圧倒的な違いがあるのが特徴です。
写真は本素材を使用したモンクストラップ「ランボーン」。
傑作ラストの存在
チャーチは約150年の歴史の中で数々のラストを創出し、同社を信奉する熱狂的なファンを生み出してきました。
そんなチャーチの代表的なラスト3種類と代表モデルを紹介してゆきます。
#81
チャッカブーツの「ライダー」や、朴訥としたフルブローグ「バーウッド」といったカジュアル靴で採用されるラスト。
トゥにボリュームがあり、全体的に丸みを帯びたシルエットになっているところが特徴です。
一見無骨さのある靴と思いきや、履いてみるとどこか気品を感じさせることがこのラストの魅力です。
#103
#81よりもボリューム感があるラスト#103は、名品と名高いプレーントゥ「シャノン」や、ダブルモンク「ランボーン」で採用。
ロングノーズ気味のシルエットが、洗練された雰囲気と精悍さを融合させています。
#173
ラスト#173は、チャーチの中で最も人気を博し、ドレスシューズをメインに使われるラストです。
代表モデルは、ストレートチップの「コンサル」やセミブローグの傑作「ディプロマット」や、内羽根式のフルブローグ「チェットウィンド」。
特徴は、スクエア過ぎないバランスの良いトゥシェイプ。旧来のチャーチファンから、カルト的な人気を博してきたクラッシックなラスト#73のフォルムを継承しつつ、現代人の足にフィットするラスト#100が掛けあわさり、エレガントで伝統的なシルエットの英国靴の王道と言えるラスト。
下記の記事では、実際に私が所有するラスト173の2足をレビューしています。
チャーチ(Church’s)は過去からの伝統を保持しつつ、現代的なデザインやシルエットを取り入れ、
時代に即した名品を創出していることが際たる魅力と言えるでしょう。
今回は以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。
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