こんにちは、Gucci(@men_in_fashion_blog)です。
書店の選書コーナーでたまため目に入った「アレックスと私」という本を読了しました。
衝撃的な内容と質の良いヒューマンドラマ系の映画の様な物語(ノンフィクションですが)で、大変満足できました。
今回は本書のあらすじとレビューを紹介していきたいと思います。
“天才ヨウム”アレックスとペパーバーグ博士の軌跡
最初の数ページを読んでみると、「天才ヨウム」のアレックスと飼い主であり、同時に彼を研究の対象とする作者(ペパーバーグ博士)の物語と書かれていた。
僕の実家で飼っているセキセイインコが、「自分の名前」「カワイイ!」「タノシイ!」、、といった言葉を喋る光景を見て、「この子は賢いな〜」と感心しているものだが、アレックスの”天才さ”はその域を余裕で超えているのだろう。
そう思うと彼の天才性がどのようなものか頭の中で興味感心が爆発!ワクワクしながら読む進めていきました。
いかにしてアレックスは天才ヨウムとして名を馳せたか
ここからは本書のあらすじをさらっと紹介していきます。
ネタバレを含みますので、ご注意ください。
ペパーバーグ博士とアレックスの出会い
それまでに何年も勉強してきた化学はもはや楽しめていなかったので、それをすべて捨ててでも動物と人間のコミュケーションについて研究したいと思った。知識もなかったし、専門的な教育も受けていなかったので、その時点で進路を変えることは大きな冒険だとわかっていたが、その覚悟はできていた。
「アレックスと私」第2章 私の原点 82p
ペパーバーグ博士がアレックスと研究を始めたのは、1977年。
当時はチンパンジーを中心とした動物に人間の言語を教えることで、動物の思考やコミュニケーションについて新しい知見を次々と明らかにしていく時代でした。
その根底にあるのは「人類が一番賢く、類人猿がその次」という常識。
そうした中でペパーバーグ博士は下記の理由で、大型インコのヨウムを研究対象としました。
- 鳥が非常に賢く、言葉を学習することを知っていた
- 鳥類は生まれつき鳴くのではなく、学習をすることを通して初めて仲間と同じように鳴ける
- 飼育することを考えると、チンパンジーよりはるかに研究が楽
- インコは言語能力が高く、さらに一番明瞭に発話するのがヨウム
彼女は、ペットショップにいた8羽の生後1年くらいのヨウムからランダムに1羽選びました。
そこで選ばれたヨウムが、後に天才と名を馳せるアレックスでした。
ペパーバーグ博士の研究内容
アレックスは紙のカードが好きだということがわかった。食べ物よりも紙を気に入ったようで、ひたすらかじり、次々とカードを細かく引きちぎった。〔中略〕「ペーパーよ、アレックス。ペーパー。」と言いながらカードをごほうびとして与えた。
「アレックスと私」第3章 はじめての発話 90p-92p
ペパーバーグ博士の研究目的は、アレックスに人間の言葉を教え込み、認知や思考の仕方を調べるというもの。
まずは、アレックスが言葉を発話する必要があったので、以下の2点の方法で教えていきました。
- 鍵を意味する「キー(Key)」という英単語を教える場合、アレックスに実際の鍵をみせ、正しく「キー」と答えられれば、ご褒美としてそれを渡す
- アレックスの目の前で、著者と第三者との対話をみせる
まるで人間の幼児を育ているかのようですよね。
結果として、ペパーバーグ博士はアレックス対して、下記の内容を約30年の際月をかけ、教えることに成功しました。
- 50個ほどの物体の名前
- 7つの色
- 5つの形
- 8までの数字
研究過程で明るみになるアレックスの天才性
「色は何?」「形は何?」という質問に正しく答えるためには、色や形を概念として、理解していなければならない。つまり「グリーン」「ブルー」「スリー コーナー」「フォー コーナー」などといった単語が、単にものの名称をさすのではなく、いろんなものに含まれる「特徴」の「分類」だと理解することが必要なのだ。これもアレックスにできるはずがないとされていた課題だったが、研究開始から3年目で見事にクリアした。
「アレックスと私」第4章 さすらいのアレックスと私 129p
長い年月をかけた研究によって、アレックスは概念も理解しました。
例えば、上記の写真にある通り、
4つの赤いブロック、7つの青いブロック、3つの赤いボール、4つの青いボールを乗せたトレーをアレックスに見せ、「赤いブロックは何個?」「4つのボールは何色?」と聞くと、きちんと「フォー(4個)」「ブルー(青色)」と答えることができたのです。
その他にも僕が印象に残ったアレックスの能力は下記の3点です。
足し算が可能
ex) トレーの上に複数個のナッツを乗せ、それを逆さまにした2つコップで隠す。例えば1つめのコップに2個のナッツ、2つめのコップに3個入れる。ひとつめのコップを持ち上げて、アレックスに見せてからコップを戻し、2つめのコップも同じ作業を繰り返す。最後に「アレックス、全部でいくつ?」と聞く。そして彼は「ファイブ」ときちんと答える。
この試行を半年間繰り返し、その正答率はなんと85%だったようです!
オリジナルの造語を発話する
ex) 博士の助手がケーキを持ってきたので、アレックスを含めみんなで食べた。その時にアレックスは、「ヤミー ブレッド(おいしいパン)」と言った。彼は、「ヤミー(おいしい)」「ブレッド(パン)」も知っていたので、「ケーキ」を表すために2つの言葉を組み合わせた。
自然にヒトの言語を使って会話する!
ex) アレックスは、博士を始めとする”人間”に対して、「ナッツホシイ」「カタイキタイ」「(ケージに)カエリタイ」「アシタクル?」「アイラブユー」と言った様々な言葉を人間に語りかけています。
しかも発話するだけでなく、自分の要求や感情をぶつけるために使っているのです。(独り言や無意味な発話ももちろんしますが)
人間(類人猿)だけが特別な知能を持っているわけではない
本書では、アレックスが特別に賢いのか、ヨウムすべてが賢いのかは解明されていません。
前述の通り、アレックスは博士からランダムに選ばれたヨウムでした。
ただし、「オウム返し」の域を超えたコミュニケーションスキルや足し算、物体・色の識別ができるアレックスが教えてくれたことは、知性(=認知能力)を備えているのは、類人猿だけではないということ。
ひょっとしたら、人間には認知できない特別な能力を備えているのでは?といった視座を与えてくれるのも本書の良いところです。
おわりに
アレックスは頑固者で自分が一番(=王様)の扱いを受けないと気が済まない性格だったようで、彼の性格に博士や研究に関わるメンバーも大変だったようです。笑
本書では、アレックスと博士のユーモラスな掛け合いや愛情ある関わりが描かれており、ヒューマンドラマ?として読んでも十分に楽しめる内容で、オススメできる一冊です。
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