こんにちは、Gucci(@men_in_fashion_blog)です。
『13歳からのアート思考』は僕がブログを始める一つのきっかけとなった本。
「他人が定めたゴール」に向かって努力するのではなく、「自分の興味・好奇心」に目を向け、自分なりの視点を持つことが、最良の結果を導くための原動力となることを知りました。
アート思考とは何か?
普通の大人は”アート鑑賞”をできていない?
“ビジネス”だろうと、”学問”だろうと”人生”だろうと、「自分のものの見方」を持てる人こそが、結果を出したり、自己実現できるのは?という問いが、本書の原点。
「自分のものの見方なんて持っているよ」と思っていた僕に対して、本書はモネの『睡蓮』を鑑賞するように投げかけます。
印象派の中心人物として知られるモネが、彼が愛した水性植物の睡蓮を題材に、季節や時間とともに変化する光の効果をとらえた一連の絵画作品の1つ。
『13歳からのアート思考』3頁より
岸や空も描かず、大胆に水面だけを描いた構図からは、日本美術の影響も感じられる
絵が挿入された次頁で、
「絵を見ていた時間」と「解説を見ていた時間」どちらが長かったか?
、、と質問が入ります。
「絵を見ていた時間」はほんの数秒。「解説を見ていた時間」の方がよっぽど長かった…
まず本書で教えてくれたことは、僕(読者)は絵の鑑賞をするのではなく、作品とその背後にある情報を照らし合わせる確認作業をしていただけということ。
上記では、「自分なりのものの見方」とは程遠く、物事の表面だけを撫でてわかった気になっているだけですよね。
アート思考とは、自分の興味に対して、自分なりの視点で探求し続けること
このようにして「自分なりのものの見方」を喪失しつつある人に対して、アート的なものの見方の考え方(=アート思考)を大切さを説いたのが本書です。
アーティストのように考える「アート思考(Art Thinking)」がビジネスの世界でも真剣に模索されているのです。
「アート思考」のプロセスは具体的に下記の3ステップです。
- 「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
- 「自分なりの答え」を生み出し、
- それによって「新たな問い」を生み出す
「自分だけの視点」で物事を見て、「自分なりの答え」を作りだすための思考法が「アート思考」。
本書では、20世紀に活躍したアーティストの代表的な6作品を実際に鑑賞する中で、読書がアート思考を養うことを目的としています。
- 『緑のすじのあるマティス夫人の肖像』, アンリ・マティス作
- 『アビニヨンの娘たち』, パブロ・ピカソ作
- 『コンポジションⅦ』, ワシリー・カンディンスキー作
- 『泉』, マルセル・デュシャン作
- 『ナンバー1A』, ジャクソン・ポロック作
- 『ブリロ・ボックス』, アンディ・ウォーホル作
誰かの解説や評価を見て納得するのではなく、作品を細かく観察した上で、
- 「この作品の〜が面白くて、個人的に好き」
- 「色の表現繊細で美しい(逆も然り)」
- 「個人的に〜のため、好みの作品じゃない」
、、といった自分なりの答えを導くことに重きを置いているので、実践的で習得しやすい内容なのです。
なぜ「13歳から」なのか?
本書では13歳に立ち返り、“もう一度「美術」を学びなす”という意味を込めて「13歳からの」をタイトルに設定しています。
中学生が嫌いになる教科第一位は「美術」だそうです。
僕もそうでしたが、実際に下記のような苦手意識を感じていた人も多いのではないでしょうか?
- 「美的センスがないから…」
- 「絵が苦手で美術の時間は苦痛で仕方なかった」
- 「生きていく上で役にたつ教科と思えない」
アートの定義とは?
僕たちが抱くアートのイメージ
一般的なアートのイメージとはどのようなものを思い浮かべるでしょうか?
僕が本書を読む前のイメージは煌びやかな「絵画」や「彫刻」、荘厳な「建築物」といったイメージ。
特定の領域で功績が認められた著名な人物が作った物が”アート”だとぼんやり思い浮かべていました。
具体的には、レオナルド・ダヴィンチの『モナリザ』やミケランジェロの『ダビデ像』など。
しかし、本書を読み進めていく中で、アンディ・ウォーホルの作品を通じて僕が考えるアートの定義を見事に打ち破ってくれました。
アンディ・ウォーホルの作品にみる”アートの定義の曖昧さ”
アンディ・ウォーホルは、従来のアートの枠組みを一変させる作品を生み出していった20世紀を代表するアーティストです。
彼の代表作の一つ、1964年に発表した『ブリロ・ボックス』という作品をご覧になってみてください。
これは立方体の木箱を複数配置したものですが、この箱の「ブリロ」はアメリカの代表的な食器用洗剤!
ウォーホルがデザインしたものでもなく、この商品のロゴやパッケージデザインを、そっくりそのまま木箱に写しとっただけの作品なのです。
実際にアメリカの近代美術館(MOMA)にもこの作品は展示されていますが、この作品のどこにアートの要素があるのでしょうか?
本書では明確な答えは記載されていませんが、この作品に対するアート性は、独自性を徹底的に排したアンディ・ウォーホルの制作過程にあるのだと思います。
独自性・希少性を主眼としたアートの定義をぶち壊す”彼の創意工夫”こそが、表現の花としてこの作品を開花させたのではないかと。
アーティストだけが存在する
以上より、現代のアート作品の定義は存在しないということが一般的になっているようです。
歴史家・美術史家のエルンスト・ゴンブリッチは、古代から20世紀までの美術の歴史を書き綴った大著『美術の歩み』で下記のように述べます。
これがアートだというようなものは、ほんとうは存在しない。ただ、アーティストたちがいるだけだ
『美術の歩み』,15頁, エルンスト・ゴンブリッチ
好奇心の赴くままに探究の根を伸ばすことに熱中してみよう
本書で読んで心に刺さったのは下記。引用してご紹介します。
「アーティスト」としばしば混同されるのは「花職人」と呼ばれる人たちでした。
「花職人」は、「興味のタネ」から「探求の根」を伸ばす過程をないがしろにして、「タネ」や「根」のない花だけをつくる人です。彼らが夢中になってつくっているのは、他人から頼まれた「花」でしたありません。
『13歳からのアート思考』299-300頁より
自分たちで気づかないまま、他人から与えられたゴールに向かって課題解決をしている人 - それが「花職人」なのです。
この文章に何かグッとくるもはありませんか?
一生懸命働くこと自体は悪いことではない。
ただ、他人のために頑張るのではなく、自分のために頑張ることが自分の心を満たす重要な要素なのではないかと思います。
本書ではアーティストを「花を咲かせる人」と表現し、地上で輝く花(=作品)よりも、タネと根(探求の過程)が重要と説いています。
目の前の忙しさに追われて、自分を成長させる経験を蔑ろにしてしまわないよう、自分が興味のあることを探求し続けたいと思います。
終わりに
本書では辟易な文章でアート作品の鑑賞を通じて、「自分なりのものの見方」を持つ重要性を強く主張しています。
仕事やプライベートの忙しさに追われて、本質的に大事なことを見落としてしまっている人におすすめしたい本です。
本書に出会えてよかったと心から思います。
今回は以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。
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